Customer Success Forum 2019 登壇レポート「株式会社NTTデータ」

富国生命保険相互会社事例 Salesforceエコシステム活用による短期導入のご紹介

去る6月7日、東京・赤坂インターシティコンファレンスにおいて、オプロ主催によるビジネスフォーラム『Customer Success Forum 2019 経営と現場が変わる「6つの鍵」~ サブスクリプション時代の顧客戦略』が開催されました。本記事ではその中から、株式会社NTTデータ デジタルビジネスソリューション事業部 課長代理の岡田和彦氏が登壇した講演「富国生命保険相互会社事例 Salesforceエコシステム活用による短期導入のご紹介」の内容をご紹介します。


金融業界でもクラウドがシステム構築手段のひとつに

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株式会社NTTデータ デジタルビジネスソリューション事業部 課長代理 岡田和彦 氏

日本屈指のインテグレーターとして、データ通信やシステム構築事業を展開している株式会社NTTデータ。同社では創立30周年を迎えた2018年5月に、新たなグループビジョン「Trusted Global Innovator」を掲げ、パートナー企業と共にさらなるビジネス革新と技術の活用を目指しています。

岡田氏は事例紹介の前に、まずは金融業界におけるトレンドについて解説しました。
金融業界では技術の進化によって、よりユーザーの身近でデジタルサービスが提供されるようになっています。たとえばテクノロジとの融合による金融機能の変革「FinTech」では、スマートフォンを使ったモバイル決済が急激に増加。一方、銀行ではリアルな店舗の統廃合が進んだり、ATMを共同で設置するような動きも出てきています。こうした世界では、金融サービスを手軽に利用できるスマートフォン向けアプリケーションを、クラウド上で即座に提供できる環境が必要です。

岡田氏は金融機関のシステム開発状況について、「金融機関は堅牢性と信頼性を重要視したミッションクリティカルなシステムが中心でしたが、どうしても開発に多くの時間とコストを要していました。そうした中、クラウドは当初こそセキュリティに関する不安から金融機関による利用が進まなかったものの、セキュリティ技術が向上した昨今では、銀行でもシステム構築手段のひとつとなっています」と語ります。
金融庁のシステム安全基準「FISC」に準拠したクラウドサービスが増えていることもあり、実際に国内金融分野ではクラウドサービスの利用が進んでいます。
「ポイントはすべてのシステムをクラウド化するのではなく、セキュリティの確保が第一である基幹系のシステムを従来通りオンプレミスで構築し、コストや時間の節約が重要な新規事業用の仕組みにはクラウドを利用する、などの使い分けが始まっているという点です。クラウドファーストの動きの中では、IaaSやPaaSなどのITインフラだけでなく、SaaSなど外部の企業が制作した業務アプリケーションの導入も増えています」(岡田氏)


乗合代理店も絡む募集代理店支援システムを刷新

続いて岡田氏は、富国生命保険相互会社の事例について解説しました。
富国生命保険相互会社は、1923年に創業した老舗の生命保険会社です。今回のプロジェクトは、学資保険「みらいのつばさ」に関する募集代理店支援システムの刷新が目的でした。
保険への加入は一般的に、契約期間や条件などに応じた保険設計書を保険会社の営業担当者から受け取り、説明を受けて納得したら申し込む、という流れになっています。今回のプロジェクトでは、この保険設計書と申込書を作成し、設計書として印刷するシステムを刷新しました。

システムの利用者は、富国生命保険相互会社の商品のみを販売する専業募集人員が約3000名、複数の保険会社の商品を扱っている乗合代理店の募集人員が約1万名です。乗合代理店の場合、複数の保険会社の代理店向けシステムにログインして事務手続きをする必要がありますが、それを一度のログインで複数の保険会社にアクセスすることを可能としているのがNTTデータの「保険会社共同ゲートウェイ」です。本プロジェクトでは、この「保険会社共同ゲートウェイ」を経由してアクセスすること、そして基幹システムで出力された保険料計算の結果を保険設計書に印刷することが重要な点となりました。


既存システムが抱えていた3つの課題

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富国生命保険相互会社の既存システムでは、大きく3つの課題がありました。まずは、システムのストレージ機器が1年以内に保守期限を迎えるため、急いでシステムを更改する必要があること。そして、既存のシステムはスクラッチ開発なので、システムの開発・運用の負担が大きいこと。さらに、基幹システム(Host)と保険料計算で連携するためシステム開発や改修に時間がかかり、ビジネス変化に応じた柔軟な対応が難しい点も挙げられます。
これらの課題に対し、富国生命保険相互会社では「SaaSなど世の中のサービスをなるべく標準機能でフル活用して、クイックに導入する」「クラウドサービスを利用することで、自社でシステム資産を持たず、保守・運用のコストを低減する」「Hostなど既存のシステムや、保険募集人の方々の業務など、既存の仕組みに影響を与えないシステム設計にする」というイノベーティブな決断の下、システム刷新に乗り出したのです。


わずか5ヶ月で募集代理店支援システムのシステム刷新を実現

しかし一方で、「SaaSの標準機能でどこまで実現できるか」「そもそもクラウドサービスは安全か」「スピード感を持ってクイックに導入ができる」「保守・運用の負担を削減できるか」「社内のHostとは安全につなげられるのか」「保険会社共同ゲートウエイとSaaSを接続できるか」「保険設計書と申込書もレイアウト正しくクラウド経由で印刷できるのか」「柔軟なレイアウト変更ができるのか」など、より具体的な課題が存在するのも確かです。そこでNTTデータでは、次のような解決策を提示しました。

まず機能に関しては、CRMや代理店向けの標準機能が豊富なSalesforceを採用。今回はできる限りコーディングを避け、標準機能を活かした開発を行うことで、短期間での導入を実現します。安全性に関しても、SalesforceはFISCの基準を満たすセキュアなサービスであり、標準機能を活用している限りゼロからセキュリティ対策を検討する必要もありません。
保険会社共同ゲートウェイとの接続については、クラウドサービスであるSalesforceとの接続にリバースプロクシの仕組みを採用。NTTテクノクロス株式会社が提供しているクラウドセキュリティソリューション「Trustbind」を保険会社共同ゲートウェイとSaelsforceの間に設置することで実現しています。また、Trustbindの機能によって保険会社共同ゲートウェイからのシングルサインオンを可能にしています。
クラウドを経由した設計書や申込書の印刷に関しては、Salesforceとの連携実績が豊富なドキュメントフレームワーク「OPROARTS」を採用。単純に印刷するだけでなく、レイアウト変更にも柔軟に対応が可能です。

NTTデータでは、こうした仕組みを採用することで、わずか5ヶ月という短期間で募集代理店支援システムのシステム刷新を実現。通常では大きな負担がかかる令和への改元についても、「OPROARTS」の自動対応機能を用いることで、従来のシステムと比べて低負担・低コストかつ短期間での対応が可能になったそうです。


スピーディーなプロジェクト立ち上げを全力でサポート

最後に岡田氏は、NTTデータが提供するデジタル変革の特徴「スピード感」「デジタル変革人材の参画」「各種システムとの連携」について紹介しました。
「スピード感」を生み出すために、同社ではSalesforceなどクラウドサービスを活用。Salesforceではパートナーとして国内最上位の「Platinum Partner」に位置づけられており、国内有数のノウハウや実績を持っています。
「デジタル変革人材の参画」は、デジタル変革の実現にあたって求められる各レイヤーの人材を提供し、システム導入・活用の支援、プロジェクト推進メンバー、サービスデザイン支援などを行うものです。たとえばSalesforceビジネスでは、「ITDirector」「CSM(Customer Success Manager)」「開発SE」という3種類のロールごとに、適切な人材を提供。巨大な社会基盤系システムからアジャイル開発まで、既存の仕組みを活かしながらクラウドなどを導入していくことが可能です。
基幹システムや共同システムに関する開発・提供の豊富な経験を活かした、「各種システムとの連携」にも大きな強みを持っています。金融業務の共同利用型リモートチャネルサービス「ANSER」、利用者・金融機関・FinTech事業者をつなぐクラウド型SoE基盤サービス「OpenCanvas」など各種ソリューションにより、業界を問わずさまざまなシステムとの連携が行えます。
最後に岡田氏は「たとえば『既存のシステムに手を入れることが難しく、デジタル変革の施策を打つことができない』『デジタル活用のアイデアはあるが、デジタル技術に関するノウハウがない』といった課題を抱えている場合は、ぜひ弊社にお声掛けください。お客様のデジタル変革を進めるため、スピーディーなプロジェクト立ち上げを全力でサポートいたします」と語り、講演を締めくくりました。


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